哀温ノ詩

※スクスタ内の各種ストーリーやパンフレット・雑誌、ライブの内容に言及する可能性があります




























ニジガクみゅ〜じっくウィーク!での初見の印象としては、ついにエマちゃん、というかちゅんるんに歌い上げ系の曲が来てくれたな、という感じだったと思います。
Evergreenのときからこの人めっちゃ歌上手いな (ここにてん☆ふぇすの23話の画像を入れる) という気持ちだったんですが、声のかわいさや曲ののどかさの雰囲気が目立つのであんまりそれが広く伝わってなさそうな気もするなぁ、とも思っていたので、こういうわかりやすく「おうたがたいへんおじょうずですね……」となる曲が来てくれて嬉しかった、という気持ちがありました。


キズナエピソードはかいつまんで言えば、
  • 5話まで:自分がどういうスクールアイドルになりたいのかを模索するお話。幼少期、大雪の夜に親もいない1人の家で過ごしていたとき、動画で観たスクールアイドルのおかげで不安を拭えた経験に立ち返ったことで、「安心」を与えられるスクールアイドルになりたい、という結論に辿り着いた。
  • 13話まで:「声繋ごうよ」に対応するエピソード。日曜保育のボランティアに行ったとき、1人だけ輪から外れていた子を気にかけるエマが、そんな子とも一緒に歌って仲良くなれるような曲を作りたい、という気持ちを込めて作られた曲。
  • 22話まで:「哀温ノ詩」に対応するエピソード。幼い頃に動画で観た、エマがスクールアイドルを目指すきっかけになった人物を探すエマ。探していたスクールアイドルの (もしかしたら間接的な) 後輩である夏川マイが、エマがずっと動画で観ていた曲を受け継いでいたことを知る。しかし、マイは次のライブでスクールアイドルをやめるという。惜しみながらもライブを支えていたエマはラストライブ当日、マイにステージへと呼ばれる。マイ自身も「大好きだからもう聴けなくなるのは嫌だ」と言って先輩から引き継いできた曲を、同じくらい愛してくれるエマへと引き継ぐことを宣言し、一緒にこの曲をパフォーマンスする。これが哀温ノ詩である。
という感じだと思います。
つまり哀温ノ詩はエマ (とあなたちゃん) が自分たちで作った曲ではない、というのがある意味スクスタ楽曲としては初めての形かなと思うのですが、今までの曲も含めたエマの曲として僕が思う大事なエッセンスがこの曲にも共通して現れていると思います。
それは「時間や空間を越える」ということです。


Evergreenは1番で故郷 (遠い場所) のことを思ったり、2番で1日の思い出 (過去) を振り返ったあと"別々の道をゆく その日がくるとしても" (未来) と突然哀愁漂うことを言ったり。
声繋ごうよでは (つらいことがあったら) "この歌を思い出して欲しいの" と言ったり。
エマちゃんの曲は、たとえばライブで曲を聴いているその場所・瞬間だけでなく、それを思い出として振り返るどこか・いつかの部分もすごく大事に意識しているところがあると思っています。
それはエマちゃんの原体験があくまで動画であり、現地の生ライブではないからかもしれないな、と思います。
現地で聴くライブの経験も素晴らしいものであることは間違いないですが、実際にエマちゃんの心に残りづけているのは録画された、おそらくリアルタイムではなく後追いの動画です。
それでもエマちゃんをスイスから日本へと駆り立てるほどの衝撃を与えた。
Evergreenの2番サビの歌詞には "いつまでも愛されていく エヴァーグリーンの歌" という歌詞がありますが、Evergreenには「常緑」という元来の意味から派生して「ずっと長く続く」、最近の流行り言葉で言えば「サステナビリティ」に近い意味もあります。
"いつまでも愛されていく" という装飾句が「エヴァーグリーン」をその意味で使っていることを補足しているような形になっていると思いますが、この部分から僕が感じるのは、曲を歌う今の想いを伝えたいというより、日常も含めてずっと心に残り続ける歌になって欲しい、という願いもあるではないか、ということです。
声繋ごうよの "この歌を思い出して欲しいの" はまさにそうで、ライブの瞬間に気持ちを癒したいというだけでなく、ライブで一緒に歌ったときの感覚をつらいときに思い返すことで気持ちを軽くできる、そんな思い出も一緒に作りたい、という気持ちを感じます。
ライブの瞬間がどうでもいいということではなく、もちろんライブで心に残るようなパフォーマンスをするからこそ、思い返せるのだと思いますが、エマちゃんの歌はその先の思い出として心の支えになるところまで含めて1つの体験として重要視している、と感じています。


これが僕の思うエマちゃんの歌が「時空を越える」というテーマがある、ということなのですが、哀温ノ詩にもその想いが詰まっていると考えています。
わかりやすいところだと、"千歳越え"・"千里越え" がまさにまんまそれに対応していると思います。
"誰より傍で唄ってゆこう" もそうだと思っていて実際の物理的距離が一番近いということはないと思いますが、物理的な距離を越えて歌を届けようとしているエマちゃんだからこそ、心理的には一番近くまで寄っていける。
2番の "其のこころへ唄ってゆこう" の「その」という部分も上手いなと思っていて、ライブ現地で「あなた」という歌詞を聴いても、自分の周りに「あなた」に該当する人がたくさん視界にいて、自分1人だけに向かって歌っているという感じはそんなに強くないかなと思うのですが、ライブではなく動画で1人部屋で観るようなときに "其のこころ" という言葉を聴くと、なんだか自分1人だけに向けて歌ってくれているような没入感を感じますし、自分に寄り添ってくれているようにも感じます。
2ndライブはオンライン開催となり、ちゅんるんは無観客であることでかなり精神的に来るものがあったようなのでこれがよかったとは言い難いですが、実際にエマちゃん同様哀温ノ詩を部屋で1人離れたところから観ることができた、というのは貴重な体験でもあったという気はします。


空間について、遠いところからでも届けてくれているという、感じが出ているのは、この曲の和のテイストであることもあると思っています。
純粋にスイスからの留学生であるエマちゃんが日本の文化に触れ、好きになってくれたから和の曲を歌ってくれる、という捉え方をしてもとても嬉しいことだなと思います。
実際キズナエピソードでも、日本の着物に憧れて嬉しそうに着ている姿はとても微笑ましいです。
さらにちょっと踏み込んで、スイスにいる頃、言葉がわからない日本の曲でも好きになることができたエマちゃんだからこそ、今どこにいるのかに囚われずに響く歌を歌っていきたい、という考え方もいいなと思っています。
日本語を学び、"千里越え" の意味を理解したからこそ、エマちゃんはスイスから日本へと留学することを決められたという部分もあるのかもしれないな、とも思います。


時間の方についてもう少し別の角度から、エマちゃんの成長の軌跡という観点から考えると、エマちゃんは哀温ノ詩から始まって、Evergreen、声繋ごうよ、そしてまた改めて哀温ノ詩に戻ってきた、という流れを考えることができます。
これはエマちゃんに限らず虹ヶ咲全般としてだいたいそうだと思うのですが、
  • 1stアルバムの曲は、自分がどういうことを考えているのか、どうなりたいのかを表す、名刺のような自己紹介曲
  • 2ndアルバムの曲は、ファンができたことで、ファンとどのような関係でいたいかについて考えた曲
  • 3rdアルバムの曲は、経験を積み、どのように成長したか / したいかを込めた曲
という形になっているのが大枠かな、と思っています。
そういう意味でも哀温ノ詩はある意味特殊で、3rdアルバムで描かれた成長も含みつつ、0番目の曲として原点でもあるという構造も成り立っているのがすごいなと思います。
ここで僕がポイントになると思っているのはDメロの "もしあなたの心この詩で救えているのならば 同じように誰かの痛みもいつか導いて欲しい" です。
これは大雑把に言ってしまえば、優しさの連鎖を繋いでいこう、ということだと思っています。
Evergreenは、まだまだだけどこれから自分がみんなに優しさを分け与えられるスクールアイドルになっていきたいという、目標について歌った曲だと思っています。
この目標のモチベーション、エマがスクールアイドルを見るだけでなく、自分もスクールアイドルになろうと思った理由に、このDメロの歌詞に心動かされたからこそ、自分も優しさの連鎖の担い手になろうという気持ちが湧いたことが挙げられるのではないか、と思っています。
そういう意味で哀温ノ詩はやはりエマちゃんの原点だなと思います。
そして声繋ごうよでは、実際にみんなを巻き込み、思い出としてみんなを支えられる歌を歌うことで、自分からみんなに優しさを分け与えることができるようになったと言ってもいいのではないかと思います。
Evergreenは自分が優しくなりたいという、まだ自分だけの部分。
声繋ごうよは自分のファンに優しさを伝えることができて、自分から距離1のところにまで優しさを伝えることができました。
こうした成長があったからこそ、今度はファンのみんな、この歌を聴いたみんなも優しさを伝えられる存在になって欲しいというメッセージが哀温ノ歌のDメロだと思っていて、これが実現すれば、ファンのさらにその先、距離2のところまで優しさが広げられるようになります。
LIKE IT! LOVE IT! のせつ菜ではありませんが、このように理想を実現するためにまた一歩世界を広げたようにも思えます。
それができるのはEvergreen、声繋ごうよを通じた成長があったからですし、哀温ノ詩の魂を心に宿して続けてきたスクールアイドルとしての成長が今、哀温ノ詩を歌うにふさわしいところにまでついにエマちゃんを導いたのだと思うと、感慨深いものがあります。
哀温ノ詩を受け取ったエマちゃんが、今度は哀温ノ詩を伝えていく存在になっていく。
この、1つの曲をスクールアイドルたちが脈々と引き継いでいくというのも、エマちゃんが願っていた "いつまでも愛されていく エヴァーグリーンの歌" の一つの形であるという気もして、そこも好きなポイントです。


2ndライブでのパフォーマンスもとてもよかったですね……。
ちゅんるんは前述の通り不安な気持ちが強かったようですが、それを感じさせない圧巻のパフォーマンスでした。
笑顔を見せる場面は少なかったかもしれませんが、真剣な表情や歌声の力強さから、エマちゃんがこの曲を大切にしていて真摯に向き合っているのだということが伝わってくる気がして、とても響くパフォーマンスでした。
あれはなんで2番で突然扇子を回しながら前後に動きつつ歌い始めるんですかね……歌い上げる曲なんだから歌に集中させてあげて欲しい……でも全然乱れず歌が上手い……
あれはなんでDメロで突然階段に横になりながら歌い始めるんですかね……歌い上げる曲なんだから歌いやすい体勢で歌わせてあげて欲しい……でも (変な意味ではなく) 添い寝して優しく寄り添ってくれてるみたいなのはよい……そしてやっぱり歌が上手い……
演出としてもARで最初に青い蝶、最後の方には赤い蝶が出てきますが、最初の青い蝶はマイ、最後の赤い蝶はエマ (今回の衣装) を表してるような気がして、ここでも今回のライブパフォーマンスを通じて哀温ノ詩が引き継がれた、という感じがしてとても好きです。

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