Stellar Stream
映画「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章」の挿入歌で、上原歩夢のソロ楽曲です。
今までのアニメの歩夢の楽曲は、一歩一歩コツコツと進んでいく歩夢の歩みを感じる歩くようなテンポ感でしたが、この楽曲では速く力強いビートが劇場版を経て悩みを振り切った爽快感と、競い合うことに向き合い一段と頼もしくなった歩夢の成長を感じさせます。衣装のスタイリッシュさも相まってカッコいい歩夢を感じつつも、歩夢らしい柔らかな動きと屈託のない笑顔にいつもの安心感も覚えます。
名前に含まれていることもあり、一歩一歩歩いていくことが1つのモチーフになっている歩夢ですが、今回の曲ではタイトルにも表れている通り、空や宇宙がテーマになり、歌詞にも"飛ぶ"・"soar (=舞い上がる)"・"glide (=滑空する)"・"flutter (=羽ばたく)" など、歩くというより空を飛ぶことが意識されたワードが散りばめられています。既存のアニメ曲のMVでも歩夢が空を飛ぶカットがありましたが、今回のMVではさらに高く、宇宙まで飛び上がった歩夢の姿が描かれています。PHOENIXで飛ぶことを歌った嵐珠に呼応したところもあるのかもしれませんし、Dream with Youの"飛び立てるDreaming sky 一人じゃないから" に対応しているようにも思います。PHOENIXとの対比でいえば、PHOENIXの歌詞にある "眩しいほどの光を浴びて" の嵐珠が浴びた光には歩夢も含まれていると思いますが、このStellar Streamでは "眩しい光をまとって" と自らが光を放つだけでなくみんなからの光も一緒に連れていくようなニュアンスも含みつつ、でも確かに嵐珠に光を見せるような表現があるのも面白いなと思います。
TVアニメにおける歩夢の楽曲は、Dream with Youではスクールアイドルを侑と一緒に始める決意が、Awakening Promiseではファンのことも大切に想うようになった心の変化が主に描かれていると思っていますが、今回のStellar Streamでは初めて同好会の仲間に対する想いがメインに描かれているのではないかと思います。1番Aメロの "澄んだ空にひとつふたつ 光る星たちが駆けだす 何を望み どこへ行くの ねぇ聞かせて" も、同好会に限らないと思いますが、それぞれがそれぞれの夢へと駆け出す仲間の姿に感じますし、MVの途中で描かれる同好会メンバーたちがステージに向かって階段を上がるような背中も、頼もしさとともにみんながそれぞれの場所に向かってバラバラになってしまうような焦燥感も感じます。同じくMVに出てくる砂時計も、止められない時の可視化でありつつ、星のように輝く砂が中央で1度ぶつかってからバラバラに落ちていく様子を歩夢が見つめているように思えます。
そもそもバラバラになることを恐れるのも、歩夢が同好会のみんなのことも大切に想っていて、離れ離れになりたくないと感じているからだと思います。タイミングが卒業前を描く完結編だということも、歩夢自身は意識していないだろうと思いますが、我々受け手としては「バラバラになる」ということにまた別の意味も含めて不安があるところなのではないでしょうか。えいがさきの中でスクールアイドルGPXを通して競い合うことで、「ぶつかり合う中でバラバラになってしまうのではないか?」という不安に、「それでも前に進むんだよ」という後押しを貰い、嵐珠の想いを受け取った歩夢の、歩夢なりの答えがこの楽曲で描かれているように思います。それは "紡いだ未来できっとまた出会う" という歌詞によく表れていると思います。砂時計も落ち切るまで時間が進み、ひっくり返せばまた中央で出会うことができます。
また、"夢と夢で結んだ心 抱きしめていよう ずっとぎゅっと" という歌詞もまた、これまでの絆があるからこそ "ひとりでもひとりじゃない 心はいつだってそばにいるよ" という冒頭の言葉に繋がっていくのだと思います。"夢と夢" は虹色Passions!にも出てくる "夢と夢 繋いでいこう"、"夢と夢 叶えていこう" と同じ表現です。僕はこの、みんなで1つの夢ではなく、それぞれの夢をそれぞれに叶えていこうというニュアンスが感じられる表現が虹ヶ咲らしくて好きなのですが、夢と夢をぶつけ合うことで繋がっていけるという今回の嵐珠と歩夢の物語のことも歌っているように感じます。
"飛跡伸ばしてく our stories"も、storyが複数形になっていることから、みんながそれぞれに夢を追いかけている姿が想像されますし、たくさんの色の飛跡が伸びていけば虹になるという、えいがさきの他のソロ曲でも見られた虹の表現とも捉えられるのがいいですね。Daydream Mermaidの"鮮やかな trace of dream"、Cara Tesoroの"天橋立ちゆく"、PHOENIXの"輝き出す虹光" など、虹を感じる表現が他の曲にも入っていることで、"ひとりでもひとりじゃない" と思っているのもひとりじゃない、という感じがします。
曲名のStellar Streamは、直訳すれば「星の流れ」という感じで、それこそ曲中の "飛跡" に近いもののように感じます。また、Stellar Streamには恒星ストリームと呼ばれる天体構造の意味もあります。Wikipedia の画像だけを見ると円環のようになっていて、"いつかまた出会える" という表現のようにも思えますが、現象として見ると、銀河同士が衝突するとき、大きな銀河の重力の影響で小さな銀河の中の星達が引き剥がされて形を変え、線上に伸びていった結果生まれる構造である、というのが僕の理解です。これはまさに、スクールアイドル同士がぶつかり合うことで形は変わってしまうかもしれないけど、より強い光へと惹かれて今ある場所から飛跡を伸ばしていくという、この曲で描かれている歩夢の想いをぴったり表しているなと感じます。
また、"大事にしたい約束達は 色彩増してはきらめいてる" という歌詞もあります。"約束達" と複数形になっていますが、約束といえばDream with Youの "Make a promise" や Awakening Promiseを思い出します。同好会のことはもちろん、これまでの侑やファンたちとの繋がりもまたこの曲に含まれているし、その気持ちはさらに増して光を放っている、という気持ちが感じ取れます。そう考えるとその前の歌詞である "数えきれないほど blooming ありがとうが溢れてる" もまた、ファンからたくさんのガーベラを、そして侑からローダンセを受け取ったAwakening Promiseの "交わす約束 そう鮮やかに 咲かせていくの"、"きっときっとね 強くなるからね 伝えよう 沢山のありがとう" から続く道の先に、確かに強くなった今の歩夢の成長が見えるなと思います。
宇宙へと飛び出すことすら迷わないほどに成長した今の歩夢の強い心を、優しく柔らかいいつもの歩夢らしい言葉選びで伝えてくれる、Stellar Streamはそんな楽曲だなと思います。
P.S. ところで、なんで突然分身するのかはよくわかりません。いや、演出としてはめっちゃ好きなんで仮に意味とかなかったとしても全然いいんですけど。なんで突然分身するのかはよくわかりません。
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